莨盆は煙草を吸うための道具ですが、茶道では「どうぞ一服煙草でも吸いながら、くつろいでいてください」という意味合いで出されます。
出される場面は、薄茶の時ですが、茶事では寄付や腰掛などでも出されます。
日々のお稽古で、莨盆を扱うことは少ないため基本的なことも知らずにいる人も多いのではないでしょうか?
私もそうでした。
でも、茶事を行ったり、大寄せでお席を持つこととなれば、理解していないといけないお道具の一つです。
何が必要なのかを理解し、最低限の道具の合わせ方だけを覚えておきましょう。
莨盆と中に入れておく道具
莨盆には、火入、煙管、莨入、灰吹が入っています。
莨盆が塗りなのか、木地なのかによって、火入を染めにするか、唐津にするかなども一応目安はありますが、絶対ではありません。
それぞれを見ていきましょう。
1 莨盆(たばこぼん)
表千家では、莨盆の下に奉書を敷いておきます。
奉書は書道具店、文房具店に売っていますので求めてください。
機械漉きと手漉きのものがあり、お値段は機械式のほうが安価です。
敷き方ですが、莨盆の大きさに合わせて折ります。
折り方は、まずは縦にして二つに折り、そこから莨盆の寸法に合わせて折っていきます。
輪の部分を手前と右にして袷、はみ出た輪でない部分を下側に折り込みます。
上の横長部分をまずは折り、次に左側の縦部分を折り込み完成です。
上から見ると、綺麗な一枚の紙にしか見得ない状態が正解です。
詳しい方法については、別ページにて解説しますので、そちらをご確認くださいね。
2 火入(ひいれ)
火入も交趾焼、青磁、京焼から、楽焼、信楽焼、唐津焼、織部など、様々な素材のものがあり、これは莨盆との相性も少しあります。
火入には、風炉用の灰を入れ、火入用の炭も用意します。
火入に灰を入れ、炭を入れ、灰形を作るのに必要な道具ですが、筋を付けるための棒、灰抑え、炭を入れるための火箸、器と灰の際を整えるための筆や羽など。
灰に筋をつける道具は灰抑えと筋用の棒があれば大丈夫です。
鳥の羽などあると周りの余分な灰を落とせたりもしますが、なければ先の尖った綿棒などでも代用できました。
また、灰をかき混ぜる香用の小さい火箸ですが、100均のステンレス箸でも代用できます。
火入れには、火入れ炭が消えないように、よくおこった火を入れ、まず灰をあたためておき、
その間に火入れ炭(細いくぬぎ炭)をおこして、灰が温まったら、
先に入れた火を取出し、火箸でよく灰をかきならして、灰を平らにする。
よくおこった火入れ炭を灰の中央に、やや右に傾けて、少し灰から出るかげんに入れる。
火入れ炭を傾けるのはご存知ですか?
よく見るとわかりますが、表は右に、裏は左に傾けます。
莨盆の左寄りに火入れをおき、その右に、灰吹きには水を少し入れて置き合わせる。
この場合、火入れの足二つが右に向き、灰吹きと向かい合う形となる。
3 煙管(きせる)
煙管も莨盆によって、2本のもの、短いもの、1本のものなど使い分けます。
莨入に巻き煙草が入ってる場合は煙管は使わないため、煙管がついてない場合もあります。
煙管は刻み莨を入れる雁首(がんくび)と、吸い口を綺麗にみがき、莨盆の手前に2本を吸い口が右になるように並べておきます。
煙管にも流派によりお好みがあります。
写真のものは、如心斎好のものです。
4 灰吹(はいふき)
莨の灰を捨てる、灰皿の役割の器です。
表千家は白竹が一般的で、お祝い事のときは青竹を使います。
莨盆に入れるときは、竹の樋を正面にして立てます。
灰入は、本来は水で濡らして、底には水を少しだけためておきますが、禁煙場所が増えてきた昨今、形だけで出すことも多く、濡らしてないことがほとんどです。
これは、なにが正解というのではなくて、茶事ならば正客が愛煙家ならば、濡らして出すべきでしょう。そして、正客も遠慮して、なるべく自分の灰皿で喫煙するなど、お互い思いやる気持ちも必要かと思います。
亭主、正客ともに愛煙家なら、薄茶席で一服ということもあるのでしょうね?
5 莨入(たばこいれ)と莨
莨の葉を入れておくもので、畳紙や陶器のものもあります。
莨の葉は扱いが少し難しく(過湿していないとまるめれない)、基本吸うこともないのですが、莨を嗜む方かいらっしゃったり、知識や話題作りとしても、1つお持ちになるといいかもしれません。
莨入に入れる莨ですが、刻み莨を使います。
少し保管に気を付けないといけないのすが、亭主が用意した莨を使う人は滅多にいないため、中身はいれず形だけでも良いかもしれません。
莨が痛んだりしていて美味しくないとか、それも意味がないので。
初めて持つお勧めの莨盆
何を持てばいいのかわからない、急遽茶事をすることになって必要になった、とりあえずお稽古用に揃えたいという人には、一式がセットになったものがあるので、まずはそちらを購入してもいいかもしれません。
もし、何か1つでもお持ちで足りないものを買いたい時や、ゆっくりと選びたいという人は、少しずつそろえて行けばよいのではないでしょうか。
莨盆は、薄茶席で年間通じて使うものです。
季節に合うものなど、その時の茶事や茶会の趣旨によってどのような材質のものを使うのか、火入は何にするかなども考えるのも、一興でしょうが、あまりたくさん持つものでもないので、ご自身のお持ちの道具に合う莨盆を一式揃えておくのが一番使いやすくて良いのかもしれませんね。
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