
檜扇は、夏を代表する茶花の一つです。その名の通り、葉が扇を広げたような形をしており、すらりとした茎の先に鮮やかなオレンジ色の花をつけます。
この独特な姿が、涼しげで風情のある夏の茶席を演出します。
花は朝に開花し、夕方に萎む一日花です。
茶花として使う季節
檜扇の見頃は7月から8月にかけての夏です。
特に盛夏に咲く花として知られ、厳しい暑さの中で涼を呼ぶ存在として重宝されます。
生け方
檜扇は茎が長くまっすぐ伸びるため、その姿を活かした生け方が基本です。
檜扇の存在感ある姿を最大限に引き出すため、他の花と組み合わせるよりも、単独で一輪挿しにするのが一般的です。シンプルな花器にすらりと生けることで、その涼しげな雰囲気が際立ちます。
また、 檜扇を生ける際にしばしば用いられるのが、茎を折って留める「折留」という手法です。長い茎をあえて折り曲げることで、花器の形に合わせたり、水揚げを良くしたりする効果があります。
花器の選び方: 細長い筒状の花器や、竹製の花器との相性が抜群です。ガラス製の花器も、見た目に涼やかさを添えるためおすすめです。
檜扇の育て方
檜扇は比較的育てやすい植物です。庭植えでも鉢植えでも楽しめます。
日当たり
日当たりと水はけの良い場所を選びましょう。水はけの良い土壌を好みます。市販の草花用培養土で十分に育ちますが、赤玉土や腐葉土を混ぜて水はけをさらに良くすると元気に育ちます。
水やり
乾燥に強く、比較的管理が楽な植物です。
庭植え: 根付いた後は基本的に水やりの必要はありません。真夏に日照りが続くようなら、適度に水を与えます。
鉢植え: 土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与えます。
植え替え・株分け
植え付けは秋(9月〜10月)か春(3月〜4月)が適しています。
肥料は、植え付け時に緩効性肥料を少量与えるだけで十分です。多肥を好まないため、過度な施肥は避けましょう。
病害虫
害虫:ほとんどありません。
病気:さび病、軟腐病、ウイルス病
花後

花が咲き終わった茎は、根元から切り取ります。
そのままにしておくとタネができてしまいますが、このタネは「ぬばたま(烏羽玉)」と呼ばれ、黒く光沢があり美しいものです。
このタネを観賞用として残しておくのも良いでしょう。
檜扇の実について

檜扇の実はがつやつやした黒で、美しいですしょね?
万葉集で「ぬばたま」と呼ばれていて、枕詞として多くの歌に登場します。
枕詞として「ぬばたま」は「夜」や「黒」といった言葉にかかります。
2首ほど、あげてみますね。
ぬばたまの 黒髪山の 山菅に 小雨降りしき しくしく思ほゆ
【歌人】 柿本 人麻呂
現代語訳: ぬばたまの(ように黒い)黒髪山の山菅(やますげ)に、小雨がしきりに降っているように、しきりに(あの人が)思われることだ。
居明かして 君をば待たむ ぬばたまの わが黒髪に 霜は降るとも
【歌人】 磐姫の皇后(いわのひめのおおきさき)
現代語訳: 夜を明かし続けて、あなたをお待ちしましょう。(ぬばたまのように黒い)私の黒髪に、夜の霜が降り積もって白髪になったとしても。
四季をのある日本ならではの文化とでもいいましょうか、自然の風景や植物を例えて歌を詠むという、なんとも風流な、美しい感性がほっこりと気持ちを落ち着かせてくれますね。
まとめ
檜扇は、その独特の姿と涼しげな雰囲気で、日本の夏の風情を豊かにする植物です。茶花としての一輪挿しだけでなく、庭で育てて花やタネを楽しむこともできます。ぜひ、ご自宅で檜扇の魅力を感じてみてください。


コメント