祥瑞とは、染付磁器の中でも高級品として扱われるものです。
中国の景徳鎮窯で、日本の茶人たちの注文によって作られたもので、美しい青色の呉須(コバルト顔料)で描かれた模様が特徴です。
茶の湯の場で、その存在は茶席の雰囲気を高め、品格を演出する役割を果たします。
鮮やかな青色の呉須による絵付けと、滑らかな白磁の地肌、そして透明な釉薬の組み合わせが、独特の美しさを生み出しています。
「祥」は「吉事の前触れ」を意味し、「瑞」は「みずみずしく美しいこと」の意味を持っています。そして、ふたつの文字を合わせて「祥瑞(しょうずい)」と読むと「美しい、めでたい兆し」という意味になります。
また、これを「祥瑞(しょんずい)」と読むと、中国の明代につくられ、日本の桃山~江戸初期に日本に渡来した陶磁器のなかでも、ある特徴を持ったものを指す言葉となるのです。
祥瑞の歴史
祥瑞は、緻密に描き込まれた地紋と捻文や丸紋などの幾何学文を多用した、いわゆる祥瑞紋様でが特徴で、一部の器の底に「五良大甫 呉祥瑞造」の銘をもったものがあるためにこの名があります。
祥瑞は、中国の明時代末期、具体的には崇禎年間(1628年 – 1644年)を中心としたごく短い期間に、中国最大の窯業地である景徳鎮の民窯で焼かれたと考えられています。
江戸時代初期に茶道具として珍重され、模倣品も作られました。
祥瑞の特徴
文様の構成:器面全体に、丸紋繋ぎ、亀甲文、紗綾形などの幾何学文様が細かく描き詰められています。
吉祥文様の多用:松竹梅、宝尽くし、如意頭文など、縁起の良い吉祥文様が組み合わされることが多いです。
濃く鮮やかな藍色:上質なコバルト顔料(呉須)を使用しており、深みのある、時に紫がかったような濃い藍色の発色が特徴です。
日本での受容と影響
江戸時代初期、祥瑞は日本の茶人の間で非常に高価ものとして扱われました。
その洗練された美意識は、日本の陶工にも大きな影響を与え、多くの祥瑞写し(しょんずいうつし)が各地の窯で制作されました。
祥瑞の主な茶道道具
祥瑞というと、水指、香合、茶器、茶碗などが主としてあります。
その中でも水指はよく拝見しますね。
形なども祥瑞ならではのものがあり様々なので、少しご紹介しましょう。
蜜柑(みかん)
明末の景徳鎮窯で日本向けに焼かれた青花磁器の一種で、特に蜜柑の形をした水指や香合などが知られています。
砂金袋(さきんぶくろ)
頸部がややくびれて立ち上り、胴から尻部分にかけて下膨れになった形のものをいいます。
砂金袋水指は、蜜柑水指よりは頸部が立ち上がり、下部が丸くなって、砂金袋の形に似ているところからこの名があるといいます。
胴締(どうじめ)
胴の中央がくびれせた形のもの
腰捻(こしねじ)
胴部分が捻じれた形をしているのが特徴
鮟鱇形(あんこうがた)
鮟鱇の形をしたものを指します。鮟鱇は、古代中国や日本の装飾美術で縁起の良い魚として扱われ、祥瑞模様の中でも人気のモチーフの一つです。
馬盥形(ばだらいがた)
馬盥形には一閑人、二閑人などがあり、一閑人(いっかんじん)は、馬盥形の口縁に小さな唐子人形が一つついたものをいい、唐子人形が二つ付いているものを二閑人といいます。
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